『ハイドリヒを撃て!『ナチの野獣』暗殺作戦』

『ハイドリヒを撃て!『ナチの野獣』暗殺作戦』

 ナチスのNo.3と言われたラインハルト・ハイドリヒの暗殺作戦「エンスラポイド(類人猿)作戦」を迫力ある再現ドラマに仕立て上げる。

過去に映画化(『死刑執行人もまた死す』『暁の七人』など)されたことがある題材で史実をベースにしているだけあり意外性は乏しいものの、『フローズン・タイム』のショーン・エリス監督の丁寧な演出は分かっていてもハラハラさせる。

目をそむけたくなるエゲツないシーンもあるが、それも史実であり、それこそが戦争の恐ろしさ。

 大事な作戦を前にして色恋によろめくあたりが若者らしさをにじませていて(効果的な演出ではあるが)、若さと死の背中合わせは何ともやりきれない思いに駆られる。

理不尽な支配と戦い、不可能ともいえるミッションに挑む姿にこそ自由と未来があると言いたいのだろうか。

劇中でハイドリヒの人物像の掘り下げはほぼないに等しい。

既知の事実という側面もあろうが、あくまでも作戦実行のチェコ人側の視点に立ってのことだろう。

 フォトグラファー出身のショーン・エリス監督の演出は実に手堅さを感じさせる。

光の取り入れ方などはさすがという印象を受ける。

 キリアン・マーフィジェイミー・ドーナンチェコ人に扮するだけに英語劇は致し方ないか。言語と引き換えに実力俳優を手に入れた本作の臨場感はプラスの方が大きかったとも言えるのではないか。

ハイドリヒ役の俳優が実物そっくりで驚くが、美術や衣装も細部まで再現率が高いように感じた。

他の主要キャストではチェコ出身のアンナ・ガイスレロヴァーが目を引く。

日本で出演作品はあまり紹介されていないが、“往年の大女優”のオーラを漂わせる。

 報復の連鎖という戦争の醜さを実感するうえでは、彼らは今も生きている。

8月12日より公開